
1. 導入(イントロダクション)
「朝起きたら子供が急に熱を出している……」「仕事の締め切りが迫っているのに、突発的な学級閉鎖で出社できない」「ワンオペでの仕事と育児の両立に、そろそろ限界を感じる……」
働く親にとって、日々の育児と仕事の不測の事態への対応は常に隣り合わせの課題です。しかし今、日本の育児支援制度は大きな転換期を迎えています。2025年から2026年にかけて順次施行された法改正や新制度により、これまで親たちが直面してきた「仕事と育児の壁」を突き崩すような、実用的な制度の拡充が進められています。
支援制度のアップデートを「知っているかどうか」で、日々の安心感や今後のキャリア・働き方の選択肢は大きく広がります。本記事では、労働法制と両立支援制度の視点から、働く親のリアルな生活に直結する「インパクト大な変更点」を5つのポイントに絞って分かりやすく解説します。
1. 【対象拡大】「子の看護等休暇」が小学校3年生まで取得可能に!行事や学級閉鎖も対象へ
育児と仕事の両立において、最も頼りになる制度のひとつである「子の看護等休暇」が、2025年4月より大幅に拡充されます。
施行前と施行後の比較
対象となる子の範囲:
【施行前】小学校就学の始期に達するまで(未就学児)
【施行後】小学校3年生修了まで
取得事由の拡大:
【施行前】①病気・ケガ、②予防接種・健康診断
【施行後】①・②に加えて、③感染症に伴う学級閉鎖等、④入園(入学)式、卒園式を追加
取得日数と取得単位
取得できる日数は、1年間で5日(対象となる子供が2人以上の場合は10日)です。従来の半日単位だけでなく、時間単位での取得も引き続き可能であり、所定労働時間が短い短時間勤務の社員でも柔軟に取得することができます。
「対象が小学3年修了時まで。入園式等の行事や感染症に伴う学級閉鎖等にも利用できる。」
解説・考察
これ生までは「子供が小学校に入学した途端に看護休暇が使えなくなる(いわゆる『小1の壁』)」や「学級閉鎖で元気な子供を家に残して仕事を休まざるを得ないのに制度対象外」といった問題がありました。今回の改定は、学級閉鎖や入卒園式といった親がどうしても仕事を休まざるを得ないリアルな場面に制度が直接寄り添う形へと進化しており、実効性の高い重要な変更であると言えます。
2. 【残業免除】対象が「3歳未満」から「未就学児(小学校就学前)」へ大幅拡大(2025年4月施行)
残業(所定外労働)を免除してもらう「所定外労働の制限」制度についても、2025年4月より対象者の範囲が大幅に広がります。
施行前と施行後の比較
【施行前】3歳未満の子を養育する労働者
【施行後】小学校就学前(未就学)の子を養育する労働者
企業側の義務
育児期間中の労働者が請求した場合、会社はその労働者の残業を免除(所定外労働の免除)しなければならない法的義務があります。会社側はこれらの制度改正に見合った就業規則などの改訂を行う必要があります。
解説・考察
子供が3歳を迎えても、保育園の送迎やワンオペ家事・育児の負担が急激に軽くなるわけではありません。「3歳の誕生日を迎えた途端に残業免除が切れ、途方に暮れる」という経験をした親も少なくありませんでした。免除期間が小学校就学前まで延長されることで、未就学期の育児負担に対して長期的な見通しを持った働き方が可能となります。
3. 【企業の義務化】2025年10月スタート!個別の意向聞き取りと柔軟な働き方の配慮
どれほど優れた制度があっても、「職場で言い出しにくい」「周囲の目が気になる」という理由で活用できない事例がありました。この課題に対し、2025年10月から企業側の働きかけが義務づけられます。
義務化の内容
これまでの「妊娠・出産等の申し出時に必要な個別制度周知と意向確認」に加え、2025年10月からは柔軟な働き方を実現するための措置等や、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取および配慮が事業主に義務づけられます。
男性労働者への適用
この義務化は女性労働者だけのものではありません。男性従業員が制度利用を請求してきた場合にも、会社は取得させなければならず、制度周知を行う義務があります。
「柔軟な働き方を実現するための措置等や仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取、配慮が事業主に義務づけられます」
解説・考察
ここで注目すべきは、法改正の全体像です。実は2025年4月より、短時間勤務の代替措置等として「テレワーク」が追加され、育児のためのテレワーク導入が努力義務化されます。 これらを踏まえると、2025年10月の個別意向聴取・配慮義務化は、単に「休ませる」「時間を短縮する」だけでなく、企業側がテレワークなどの選択肢(代替措置)を用意した上で個別の事情を汲み取る姿勢を求めるものです。これにより、フルタイム復帰と在宅勤務を組み合わせるなど、労働者にとってフレキシブルで現実的な働き方の実現性が格段に高まります。
4. 【就労条件なし】2026年4月開始「こども誰でも通園制度」のインパクト
2026年4月からは、従来の保育制度の概念を大きく変える新制度「こども誰でも通園制度」が開始されます。
制度概要
スタート時期: 2026年4月
対象: 保育所などに通っていない生後6か月〜3歳未満の子
内容: 保護者の就労の有無に関わらず、すべての子育て家庭が月10時間の枠内で柔軟に保育園を利用できる制度
解説・考察
これまでの保育所利用は「親が働いていること」が主な条件でした。この制度の登場により、「働いていないから預けられない」という障壁が取り払われます。専業主婦・主夫家庭や孤立しがちな育児層に対するリフレッシュの機会を提供し、育児の孤立化を防ぐセーフティネットとして非常に大きな価値を持ちます。
5. 【知っておくべき注意点】無給か有給かは会社次第?ノーワーク・ノーペイの原則
制度を活用する上で、労働法上のルールや自社の規定に関する現実的な注意点を押さえておく必要があります。
給与の扱い(「ノーワーク・ノーペイの原則」とは?)
労働法には「ノーワーク・ノーペイの原則(労働を提供しなかった時間分の給料は発生しない)」という基本原則があります。そのため、時短勤務や看護休暇などの育児支援制度を利用して「働かない時間」が発生した場合、その時間の給料を無給とするか有給とするかは会社が自由に決めることができるとされています。法律上、会社側に給与を補償(有給化)する義務はありません。
対象外規定の法的分類(「法的除外」と「労使協定による除外」)
育児支援制度は原則として労働者から請求されたら会社は応じる必要がありますが、労働者の雇用形態や労働条件によって対象外となるケースがあります。これには法的な区別が存在します。
法律上当然に対象外となる労働者:
日々雇用される労働者(法律の規定により、制度対象から除外されます)
あらかじめ労使協定を結ぶことで対象外にできる労働者:
継続雇用期間(有期契約期間)が1年に満たない労働者
1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
解説・考察
「制度を利用して休暇や時短勤務を取得できたものの、給料の減額幅が想定以上だった」「勤続1年未満のため労使協定により対象外だった」という行き違いを防ぐためにも、自分が権利として制度を利用できる対象であるかを整理すると同時に、自社の「就業規則」や「賃金規定」においてどのような扱いになっているか(有給なのか無給なのか)をあらかじめ確認しておくことが欠かせません。
3. 結論(まとめ&読者へのメッセージ)
2025年から2026年にかけて施行される法改正・新制度は、子の看護等休暇の拡充(小学3年生修了まで)、残業免除の対象拡大(未就学児まで・2025年4月施行)、企業の個別意向聴取・配慮の義務化(2025年10月スタート)、テレワークという選択肢の拡充、そして「こども誰でも通園制度」の新設など、働く親の現実的なニーズに合わせた大きな進化を遂げています。
ただし、これらの両立支援制度は「制度の存在を知り、正しく理解している人」だけが有効に活用できる武器です。「ノーワーク・ノーペイの原則」を踏まえた給与の扱いや、労使協定による対象条件など、自社の規定をしっかり把握した上で計画的に活用することが重要です。
時代とともに、仕事と家族の時間を両立させるための選択肢は確実に広がっています。
「制度の進化に合わせて、あなた自身はどんな働き方・家族との時間を選択したいですか?」
この機会にぜひ、これからの働き方やライフスタイルについて、家族や職場と話し合ってみてください。


